【スタッフ個人レポート】
マネージャー 教仙三玲
『「ラグビー × 生きる力」の共通項』

この教室との関係の始まりは2020年の冬。
夫から「アシスタントコーチとして岸岡選手と一緒にラグビー教室をしたい!」という相談が。急な話ではありましたが、夫はこの活動に参加することになり、スタートとなった大阪でのラグビー教室に向けて、忙しなく色んな方と連絡をとっては、スタッフ陣で和気あいあいとミーティングに挑む日々が始まりました。その頃から家庭でもラグビー教室の話で持ちきりになりました。
いざ開催当日、後ろを振り返ることもなく「行ってきます!」と勢いよく駆け出していく夫の姿が。何だかすっごくワクワクしていることがこちらにも伝わってきました。
「何かが始まろうとしている。」と直感的に感じた、そんな印象的な出来事でした。
私は最初の2年間コーチの夫に帯同するという形で、ラグビー教室の様子を見せていただいていました。小さい頃から音楽一筋で、スポーツとは無縁の世界で過ごしてきた私にとって、こんなにも近くでラグビーを観ることは初めてで、すごく新鮮でした。
私自身、色んな場所に行くこと、ルートやスポットを調べることが好きで、時折、宿泊地や移動方法でお困りのときにお手伝いさせていただいたこともありました。正直なところ、いつもこの活動のことであれば、真っ先に行動したくなるほど楽しそうにしている夫を見ていると、自分も「もっと何か役に立てるスキルやノウハウがあればよかったなぁ。」と思うほど。その頃には、この活動そのものがまぶしい存在に感じていました。
今期はマネージャーとして携われることになり、本当に嬉しかったです。任された仕事として、主に移動や宿泊手配をさせていただき、何事もなく無事にすべての開催地を回り終えられたことに今安堵しています。
”地域格差の是正”を目標に掲げて、現役ラグビー選手である岸岡智樹が運営する全国各地での移動型ラグビー教室。
初めて活動理念を耳にしたときは、「絶対にやり遂げてほしい!」とすぐさま思いました。それもそのはず、私自身も地方出身。“環境が全て”とまでは言いませんが、環境が一部の要因として考えられる苦い思いや悔しい思いを経験したことがあるからです。
私とラグビーの出会いは、進学した高校に偶然ラグビー部があったこと。入学当初「へぇ、うちってラグビー部あるんだ!」と思いましたし、体育の授業でグラウンドへ出たときに、「あれ、何のゴールなんだろう?」とラグビーポールを見て思うくらい、珍しい競技という印象。もちろん競技人口も、ごく少数でした。その後、クラスメイトがラグビー部に所属していたことから部活の話題になることもあり、以前よりも少し身近に感じました。県大会はいつも決勝戦へ行き、花園1回戦出場までは何度となく勝ち上がれる母校。週明けになれば、試合の内容や結果のことが話題になることもありました。
しかし、そこで3桁対0なんて試合もあるということを初めて知り、驚いたことを覚えています。県内での試合では圧勝しても、他府県からだと同じように圧倒的な得点差をつけられ、力不足を見せつけられるということも。
今でこそ、一部の中学校で部活動として取り入れられたり、スクールが設立されたりしていますが、ラグビーの魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいとも思いますし、この活動の価値や意義を感じます。
私は初めラグビーのルールである「ボールよりも前でプレーをしてはいけない」ということすら知りませんでした。そんな私が「ラグビー × 生きる力の共通項」という観点で、運営の裏話を交えつつ、この活動を振り返りたいと思います。
みなさんにとって、岸岡智樹選手はどのような存在でしょうか?
また、どのような印象を持たれているでしょうか?
僭越ながら…私から見た岸岡選手は、と・に・か・く「ロジカルな人」という印象です。
「文武両道」というのはまさしく彼のこと。大学では数学を専攻されていたことも思わず納得させられるくらい、スマートな方だなと感じます。ちなみに、運営スタッフでボードゲームをしてみても、上手に切り抜けて圧勝、という場面が多いです。
もちろんこれだけの人ではないですが、「目的思考・選択力・シンプルさ」を持ち合わせ、これらを巧みに組み合わせながら、物事を進めていっているように感じます。
今回マネージャー業務を行う上で「目的思考・選択力・シンプルさ」というキーワードには何度も対峙することになりました。
まず、「目的は何なのか」を真剣に考えること。考えた上でその道筋を立て、なぜその判断をするのか、どういったメリットデメリットが生まれるのか、といったことに思考が繋げられていきます。
その中の数ある選択肢の中から「何を選ぶのか」が問われます。
そして「あったほうがいいだろう。」とついつい何でも盛り込んでしまいたい気持ちに掻き立てられますが、そこはぐっと我慢してシンプルにしていく。最後に削ぎ落とすことの難しさを痛感させられます。
ラグビー教室の裏方として運営を支えていく上で、教室の中のたとえ数分の出来事であっても、来場くださる方々にとって何がベストなのか、夜中まで何時間も話し合うこともありました。その中で気付きや学びとして何度も3つのキーワードと向き合うことになり、ハッとさせられるときが多くありました。
しかし、この「目的思考・選択力・シンプルさ」というキーワードは、ラグビーをプレーする上でも必要なキーワードでもあるようにも感じます。
ラグビー教室では、「ハンズアップ・フォロースルー」というシンプルなメッセージで展開されており、プロでも大切にする基礎基本になります。シンプルだからこその難しさ、なぜそのプレーを選択をするのか、目的は何なのか。子どもたちにそのアプローチの大切さを伝えている姿を見て、ここでの学びがラグビーはもちろんのこと、生きていく上で必要な考え方に結びついていくのではないか、と感じています。
さて、3年目となったこの活動では、運営スタッフとしてスキルの高いメンバー、エネルギッシュなインターン生もさらに加わって新しい風が吹いた一年でした。
また、この活動のファンとして毎年足を運んでくださる参加者の方も増え、求めるもの・求められるもののフェーズが一段高まったと感じられました。
ご存知の方も多いと思いますが、「1.01の法則と0.99の法則」という法則があります。
・毎日、前日より1%多く努力すると1年後には37.8倍に成長
・毎日、前日より1%、怠惰にさぼり続けると1年後には0.03倍までスキル低下
つまり「現状維持は衰退」という状態になります。
どの開催地でも、「自分のものにしてやろう!」と意欲的な姿や熱い眼差しを向ける参加者のみなさんから、私もたくさんの勇気とパワーをもらいました。
きっとみなさんなら、ここでの学びを生かして毎日1%以上の成長ができていることだろうと思います。
そしてまた一年後、さらにパワーアップしたみなさんがラグビー教室に帰ってきてくれたら…それはもうこの上ない喜びとなるでしょう。
この活動がさらに広がり、一人でも多くの方に参加してもらえたら、という気持ちとともに、これまで参加してくださったリピーターの方々にも、毎年学びのある場としてこれからも愛されつづける活動になってほしいです。
最後になりましたが、この活動に関わってくださっているすべての方々へ、この場をお借りしてお礼申し上げます。本当にありがとうございました。
これからも変わらぬご支援のほどよろしくお願いいたします。
文:教仙三玲(マネージャー)